三人の保安官代理は、走らない。
走る必要がない距離まで、もう広場は閉じている。
若い代理が無線機を口元へ寄せたまま、ドギョムの左へ回る。顎に傷のある代理は右へ出る。中年の代理は真正面から来る。三人とも拳銃にはまだ触れない。触れなくても、雨の停留所に残った人間たちは十分に動かなくなる。
メンフィス行きのバスの尾灯が霧の向こうへ沈む。赤い光はすぐに雨粒の中で崩れ、広場に残るのはディーゼルの臭いと、落ちた面会申請書だけだ。
トミーの妻は水たまりの中に座り込んだまま、紙を見ている。拾う力もない。老人は屋根の下で紙袋を抱え、若い作業員は視線を自分の靴に落とす。誰も助けない。助けないことで、まだ今日を生き延びようとしている。
ドギョムは両手を下ろしたまま立つ。
若い代理の無線が短く鳴る。
「対象確保。停留所前広場。抵抗の有無、確認中」
返答はノイズに混じって聞こえない。だが若い代理の顔がわずかに緩む。許可は出たらしい。
中年の代理が透明袋の中の紙を胸の高さに上げる。雨粒が袋の表面を走り、書かれた文字を歪ませる。
「背が高い。黒髪。アジア系。軍用外套。古いダッフルバッグ。軍用ブーツ」
彼は一語ずつ読み上げる。読み上げながら、ドギョムの全身を同じ順番でなぞる。
「ずいぶん丁寧に書いてあるな」
ドギョムは答えない。
顎に傷のある代理が少し笑う。
「口数は少ない、とまでは書いてねえ。そこは追加だな」
若い代理がさらに一歩近づく。右手は無線機から腰へ移り、黒い手袋の指がホルスターの留め具に触れる。
「両手を見えるところに出せ」
ドギョムは両手をゆっくり上げる。肩より少し高く。掌を前へ向ける。濡れた指の関節に古い擦り傷が浮く。
顎の傷がそれを見る。
昨夜の二人がどこまで報告したか。膝を潰された男は話せる。肘を壊された男も、痛み止めを打てば声は出る。だが報告が速すぎる。紙はもう刷られている。三人の位置取りも、偶然ではない。
バスへ向かう道。広場から抜ける道。女の申請書が流れる角度。全部が、あらかじめ測られている。
『乗せないための広場だ』
ドギョムは内側でだけ言う。
中年の代理が顎で地面を示す。
「膝をつけ」
広場の空気が、少しだけ固くなる。老人が息を止める。作業員の肩が跳ねる。トミーの妻は顔を上げない。上げられないのか、見ないことを選んだのかはわからない。
ドギョムは抵抗しない。
片膝をつき、次にもう片方の膝を濡れたタイルへ下ろす。冷たい水がジーンズへ染みる。両手を頭の後ろへ回す。指を組まない。組めと言われるまでは組まない。
若い代理が後ろへ回る。靴音が水を踏む。拳銃の気配は近い。手錠の金属音も近い。
「指を組め」
ドギョムは組む。
顎に傷のある代理がダッフルバッグへ手を伸ばす。
「こいつの荷物を見る」
「令状は」
ドギョムが初めて声を出す。
三人の動きが一拍だけ止まる。
中年の代理が鼻で笑う。
「令状だとよ」
顎の傷がダッフルバッグのストラップをつかみ、乱暴に引き寄せる。濡れたキャンバス地がタイルを擦る音がする。バッグの口金が開かれ、中身が雨の中へ暴かれる。
替えのシャツ。丸めた靴下。古い救急包帯。割れた缶切り。歯ブラシ。紙に包んだ干し肉。折りたたみナイフ。
ナイフの刃は閉じている。違法な長さではない。軍用品でもない。だが顎の傷はそれを見つけると、わざと大きく掲げる。
「刃物持ちか」
「旅の荷物だ」
「旅の荷物ね」
顎の傷はシャツとナイフの間へ手を突っ込む。指先が布の縫い目を強く押し、内張りをめくる。ドギョムはその手の動きを見る。
慣れている。
探しているのではない。場所を知っている手だ。
次の瞬間、顎の傷が何かをつまみ出す。
茶色い小さな薬袋だった。
一つ。
続いて二つ目。
三つ目。
濡れた広場の上で、それらは妙に乾いている。袋の口はきれいに熱で閉じられ、角に白い粉が少し付いている。ドギョムの記憶にはない。ダッフルバッグへ入れた覚えも、誰かに触らせた覚えもない。
若い代理が低く口笛を吹く。
中年の代理は、読み上げた紙をしまい、もう一枚の小さな用紙を取り出す。あらかじめ空欄だけ残した報告書のように見える。
「持ってたんだよな」
顎の傷が、確認ではなく決定として言う。
ドギョムは薬袋を見る。昨日、細身の代理がミゲルのポケットへ押し込んだ袋と同じ色だ。外套に戻した袋は、あいつらの持ち物だった。今回は、自分のバッグの底から出てきた。
昨夜の報告が回っただけではない。
誰かが、ヘナの裏口を出る前から。いや、もっと前から、ドギョムが朝に出ようとすることを読んでいた。バスへ行けば、人目のある広場で麻薬所持。抵抗すれば保安官代理襲撃。乗ろうとしても止める。残ろうとしても止める。
罠は、町の雨の中にすでに置かれていた。
若い代理が背後で膝を押す。冷たい金属が右手首へ触れる。
「動くな」
ドギョムは動かない。
手錠の輪が閉じる。次に左手首。鋭い歯が皮膚の上で止まる。少しきつい。わざとだ。
トミーの妻が、ようやく顔を上げる。雨と涙の区別がつかない顔で、ドギョムのバッグと薬袋を見る。彼女の目に浮かぶのは驚きではない。諦めだ。この町では、袋はいつも誰かのポケットから出てくる。出ることになっている場所から出る。
面会申請書は、彼女の膝の前で水に沈みかけている。
中年の代理がドギョムの肩をつかんで立たせる。膝についた泥水が落ちる。顎の傷は薬袋を透明な証拠袋に入れ、時刻だけを空欄の用紙へ書く。その動きだけは丁寧だ。壊すときは乱暴で、作るときは丁寧。この町のやり方そのものだった。
「名前は事務所で聞く」
ドギョムは返事をしない。
ポケットの中で、硬貨が一枚、太腿に当たる。
二十五セント。
昨日、街灯を割った硬貨ではない。まだ残っていた最後の一枚だ。自販機にも、電話にも、バスにも使わなかった。小さな円い重みが、手錠で後ろへ回された指の届かない位置にある。
若い代理が彼の腕を引く。広場の端にパトカーが入ってくる。赤と青の光はまだ回していない。必要ないからだ。ここでは、光らせなくても人は道を空ける。
老人が横へ退く。作業員も退く。トミーの妻は退けない。中年の代理が彼女のすぐ横を通りながら、水たまりの申請書をブーツで踏む。紙が泥水の中で裂ける。
ドギョムの足が一瞬止まりかける。
顎の傷が背中を押す。
「歩け」
ドギョムは歩く。
パトカーの後部ドアが開く。内側はビニールの座席で、古い汗と消毒液と煙草の臭いが詰まっている。若い代理が頭を押さえつけ、ドギョムを押し込む。手錠をかけられた腕が背もたれへ当たり、肩に鈍い痛みが走る。
ドアが閉まる直前、彼は広場の向こうを見る。
町長エヴァン・プライスのポスターが雨水でにじんでいる。紺のスーツ。白い歯。小さな星条旗のピン。標語はまだ読める。
リハビリで立ち上がる町。
その下で、流れ者のよそ者一人が、麻薬売人として剥製にされる準備は整っている。昨夜助けた少年も、消えた姉も、にじんだ面会申請書も、その剥製の腹に詰め込まれて見えなくなる。
パトカーのドアが閉まる。
車内の無線が鳴る。低い男の声が、ノイズの底から短く落ちてくる。
「事務所へ入れろ。バッグは触るな。俺が見る」
若い代理の背筋が伸びる。
ドギョムは後部座席の暗い窓に映る自分の顔を見る。眠っていない男の顔。その目だけが、まだ静かに動いている。
カール・ラウク。
ヘナが渡した名前が、雨の向こうからようやくこちらを見た。
法が遅すぎる町で、今日倒すべき悪党を倒す男
12話 ラウク保安官の取引と罠
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