「意識あり」という無線を聞いたあとも、ドギョムは土煙の奥へ踏み出さない。
救急車の赤い光と州警察の青い光が雨に混じり、崩れたD-3の坑口を交互に照らしている。マローンは生きている。壊れた膝と外れた肩と砕けた顎を抱えたまま、坑木に縛られた状態で発見された。担架へ移される時も、意味のある言葉は出ない。ただ目だけが、まだ誰かに値札を貼ろうとしている。
ドギョムはそれを見届けると、やっと背を向ける。
夜はそこで終わらない。州警察はD-3の奥へ入り、発電機を止め、薬品箱を封鎖し、まだ息のある者と動かない者を分けていく。保健局の印影、医師署名欄画像、爆薬設置図、会計表の写し。泥と血と粉塵の中から、紙は次々と証拠袋へ入れられる。
マローンのカルテルが、その夜に完全に消えたわけではない。
夜明け前、南の国境方面へ向かった輸送線の先、メキシコ国境近くの砂漠にある小さな滑走路で、残余の人員が州警察と連邦捜査官の合同摘発を受ける。白い粉袋の一部と偽造ラベル、燃料缶、空の冷蔵コンテナが押収される。逃げた者もいる。新しいラベル、新しい輸送路、新しい田舎町は、どこかでまた作られるかもしれない。
だが、ブラスヒルに打ち込まれていた腐った根は、その朝、確かに抜かれた。
ダラスの報道局とメンフィス通信社は、午前の紙面と画面で同じ表を一面に出す。PRICE FOUNDATION、MARTON SUPPORT、CONWAY REFINANCE、RAUK OFF-BOOK、MALONE TRANSPORT。五つの列に並ぶ同日同額の三万二千ドル。その下には午前二時四分の七行と、死亡欄開、死因欄空白、医師署名貼付の文字が小さく並ぶ。
テレビはエヴァン・プライスの笑顔のポスターではなく、壇上で手錠をかけられる瞬間を繰り返す。ラウクは郡留置場へ移され、医師の治療を受けても口を閉ざしたままだ。マートンとコンウェイは州警察車両の後部座席で顔を伏せ、フィントンは供述書にさらに署名を重ねる。
午前九時を過ぎるころ、郡リハビリセンター西棟の強化扉が開く。
その扉は、これまで中から開いたことがない。開ける側はいつもカードを持つ者で、出る側の人間は名前ではなく五桁の番号で呼ばれていた。今日は違う。州警察の防水ジャケットを着た捜査官と、郡医療チームが並び、保安ブレスレットをはめられていた人々を一人ずつ外へ出す。
最初に出てきた女は、光を避けるように目を細める。次の男は足を引きずり、三人目の老人は自分の名前を尋ねられて、すぐには答えられない。看護師が番号ではなく名を呼び直すと、老人は両手で顔を覆う。
アルマはその列の端に立っている。毛布を肩に掛け、裸足ではない。州警察が用意した大きすぎる靴を履いている。彼女は一人ずつ出てくる人々の顔を見て、知らない顔にも目をそらさない。ミゲルはその隣で、包帯を巻いた右手を胸の前に抱えている。
「姉さん」
「ここにいる」
アルマの返事は短い。けれど、昨日までの地下の声ではない。外で出した声だ。
ミゲルは頷く。彼の目はリハビリセンターの扉に戻る。母を探す目だと、アルマはわかっている。けれど何も言わない。朝の列が終わるまで、二人はそこで待つ。
昼前、ヘナは焼け跡の前に立つ。ヘナズ・ダイナーはまだ黒い骨組みのままだ。カウンターのあった場所には雨水がたまり、焦げた金属の匂いが残る。州警察の黄色いテープが貼られ、捜査員が冷凍倉庫の跡を掘っている。
ヘナは左手首の古い火傷と新しい火傷を隠さない。ドギョムは通りの向かい側、壊れた郵便ポストの横に立つ。彼女は一度だけこちらを見る。何か言う距離ではない。言えば、残る。だから彼は頷くだけにする。
午後、食堂の掲示板から、行方不明者のビラが剥がされる。
作業は雑ではない。州警察の若い捜査官と、郡庁舎から来た事務員、それにヘナが立ち会う。雨でふやけた紙は、画鋲の周りから破れやすい。ジョアン・リバースのビラは右下のJR32ごと、透明な袋へ入れられる。古い五枚のビラも、番号と日付が照合されるまで証拠袋へ入れられる。
市庁舎の外壁にも、同じ作業が続く。プライスのポスターはすでに剥がされ、白い歯の笑顔は折られて箱へ入れられている。その横で、七枚の行方不明者ビラが一枚ずつ外される。紙の下には、日焼けしていない四角い跡が残る。町が見ないふりをしてきた顔の形だけが、壁に薄く浮く。
夕方前、その場所へ新しい紙が貼られる。
葬儀の案内が五枚。生存者名簿が二枚。
画鋲は新しい。紙も白い。風でめくれないよう、四隅をきっちり留める。事務員は名前の表記を確認し、グラディスが横から「そこはルイス。メアリー・ルイス」と訂正する。ディナはトミー・グレンジャーの葬儀案内の前で止まり、指先で日付の行に触れる。涙は落ちない。落とすより先に、紙を真っ直ぐ直す。
ミゲルとアルマは、食堂の掲示板の前に長く立っている。
人の流れは少し離れて二人を避ける。誰も声をかけない。声をかけるには、紙の前に立つ理由が重すぎる。
掲示板の中央、葬儀案内の三枚目に、ロサ・モラレスの名がある。五桁の識別番号の横で空欄のままだった母の名前は、ついにどちらかへ移された。生存者の列ではない。葬儀の案内の一行だ。
ミゲルの唇が動く。声は出ない。
アルマは紙を見たまま、弟の肩に手を置く。ミゲルの肩が小さく震え始める。彼は泣き方を忘れたように、最初は息だけを切らす。次に、折れた指をかばう右手で顔を隠そうとして、痛みに身を縮める。
アルマは何も言わない。問いもしない。励ましもしない。ただ弟の頭を自分の肩へ引き寄せる。
ミゲルは抵抗しない。少年の額が姉の肩に触れた瞬間、こらえていたものが崩れる。声を殺した泣き方だった。二か月分では足りない。一年分でも足りない。名前が空欄から動いたことで、希望の形も、恐れていた答えも、同じ紙の上に固定された。
ドギョムは掲示板の反対側の道端から、その姿を見る。
雨はもう弱い。泥に映るネオンはない。食堂のベルも鳴らない。ブラスヒルの通りには、初めて保安官代理のパトカーが通らない時間が流れている。誰かが小声で葬儀の日を確認し、別の誰かが生存者名簿の端を押さえる。町はまだ喉を開けていない。けれど、息はしている。
ドギョムは自分の胸元へ手をやりかけ、途中で止める。認識票はまだそこにある。ソ・ドギョムという名前も、まだ金属に刻まれている。ブラスヒルの掲示板から番号が外され、名前が戻っていく。その光景の中で、彼だけは自分の名前を深く隠したままだ。
強化扉は開いた。市庁舎の壁も、食堂の掲示板も、張り替えられた。
だが、その扉の外へ出てきた者たち全員が、生きていたわけではない。生きて戻った者たちはこれから町を作り直す。戻らなかった者たちは、ようやく番号ではなく名前で呼ばれる。
ミゲルが肩を震わせるたび、アルマの手が少し強くなる。
ドギョムはそれ以上近づかない。彼が壊したものの後に残るものは、彼が触れていい場所ではなかった。掲示板の新しい画鋲が夕方の薄い光を受け、白い紙の上で小さく光る。
その光の下で、ブラスヒルは初めて、消された名前を自分たちの口で読み上げ始めていた。
法が遅すぎる町で、今日倒すべき悪党を倒す男
113話 町長なき会議と紙の証言
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