青い警光が尾根の向こうから伸びた瞬間、廃トラックの荷台で誰も声を出さない。
ディナはアクセルを踏み続ける。赤い廃トラックは泥を跳ね上げ、崩れたD-3の坑口から離れて尾根道をさかのぼる。背後では、最後の爆発で割れた新しいコンクリートがまだ崩れ落ちている。坑口の一部が内側へ沈み、黒い土煙が峡谷の上へ噴き上がる。雨はそれを押さえきれず、粉塵は濡れた霧のように谷を越えて広がっていく。
ドギョムは荷台の縁に片膝をつき、アルマ、メアリー、若い男の体を押さえている。ジョアンは助手席で胸に固定されたメモリーカードへ顎を寄せ、半分だけ目を開けている。彼女の顔に血の気はない。それでも窓の向こうを見続けている。
「止まるな」
ドギョムは短く言う。
「止まらない」
ディナは前だけを見て答える。
尾根の下から州警察車両が二台、さらに救急車両が一台上がってくる。青い光が土煙を裂き、壊れた坑口と赤い廃トラックを交互に照らす。先頭車両の助手席から黒い防水ジャケットの男が降り、手を上げる。
「負傷者は何人だ!」
「四人。ひとり重い」
ドギョムはジョアンを示す。自分の肋骨のことは数えない。
救急医療チームが駆け寄り、助手席のドアを開ける。ジョアンは抵抗しようとするが、指は包帯の下で動かない。
「カードは」
「胸に固定してある」
「記者に先に見せて」
「医者に見せろ」
ジョアンがかすかに笑う。怒る力も残っていない笑いだ。救急隊員が担架を差し込み、彼女の足首と手首を見て顔を固くする。ドギョムは包帯ごとメモリーカードの位置を指で確認し、隊員へ低く言う。
「ここを切るな。証拠だ」
隊員はうなずき、ジョアンを車へ運ぶ。アルマは荷台から降りようとしてよろける。ドギョムは肩を支え、彼女をミゲルのいる学校側へ向かう州警察の車へ押し出す。
「ミゲルを探せ」
「あなたは」
「後だ」
アルマは言い返しかけ、メアリーが荷台の奥で短く呻いたことで口を閉じる。若い男がメアリーの肩を抱え、二人も救急隊員に渡される。アルマは振り返らない。裸足の足裏を泥で汚しながら、青い光の方へ歩いていく。
その頃、郡コンベンションホールの屋外広場では、エヴァン・プライス町長がまだマイクを握っている。
大型スクリーンには、PRICE FOUNDATION、MARTON SUPPORT、CONWAY REFINANCE、RAUK OFF-BOOK、MALONE TRANSPORTの五列が繰り返し映る。三万二千ドル。同日。同額。次に午前二時四分の七行。死亡欄開、死因欄空白、医師署名貼付。さらにミゲルのドローン映像が流れ、リハビリセンター裏庭で人間がBRASSLINEのトラックへ積まれていく。
プライスは白い歯を見せようとするが、唇だけが震えている。
「皆さん、これはシステム上の誤表示であり、外部からの暴力的な妨害による――」
言葉はそこで止まる。
州知事随行の記者たちのカメラが、壇上の彼だけを向いている。広場前列の郡検察オブザーバーは、黒い雨合羽の内側から一枚の紙を出す。令状だ。州警察汚職捜査課の捜査員二人が壇上へ上がる。
「エヴァン・プライス。公金不正流用、証拠隠滅、強制労働および組織的詐欺への関与の疑いで身柄を拘束する」
プライスはマイクを離さない。
「待ちなさい。私は町長だ。これは政治的な――」
マイクの音が切られる。だがスクリーンは切れない。会計表とドローン映像が、彼の背後で淡々と繰り返される。住民たちは叫ばない。ただ見る。今まで見ないふりをしてきた紙と番号と映像を、今度は目をそらさず見る。
郡道八十一号線の南側分岐では、別の車列が泥の上で止まっている。
判事マートンの黒いセダンと、郡銀行頭取コンウェイの濃紺のSUVだ。二台は南へ抜ける脇道へ入ろうとして、住民たちが押し出した廃トラックのバリケードに阻まれている。ルーファスの解体屋から引かれてきた錆びた車体が三台、道を斜めに塞ぐ。ライトを点けた農業用トラクター、古いピックアップ、木材を積んだ台車も後ろに並ぶ。
マートンは窓を少し開ける。
「どきなさい。これは違法封鎖だ」
返事はない。代わりに、年老いた男がスマートフォンを掲げる。別の女は死亡診断書の写しを胸に持っている。コンウェイは携帯電話を耳に当てるが、通話はつながらない。そこへ州警察の車両が南側から入ってくる。
バリケードの前で、住民たちは一歩も退かない。
ディナは尾根を下った州警察車両の窓へ走り寄る。濡れた髪が顔に貼りつき、片手には防水袋、もう片手には封筒ノートの写しがある。
「これも。店に来た代理の顔、曜日、封筒の厚み、輸送箱の数」
窓の内側の捜査官が受け取る前に、彼女はさらに言う。
「トミーの分も入ってる。私が見た。私が渡した」
捜査官は紙束を両手で受け取り、すぐ後ろの証拠袋へ入れる。
南の食料品店から出てきたグラディスは、雨合羽の中で古い書類鞄を抱えている。足元はふらつくが、目だけは折れていない。広場から到着した郡検察の車両が止まると、彼女は死亡診断書偽造の束をオブザーバーの手へ押しつける。
「貼り付けた署名と、青いインクでなぞった署名。列が違います。午前二時四分の七行もここにあります」
「あなたの名前は」
グラディスは一瞬だけ口をつぐむ。
「グラディス。元受付です。見て、黙っていた人間でもあります」
オブザーバーは何も言わず、証拠袋へ入れる。
旧車両登録事務所脇の路地では、フィントンが作成した供述書の写しが郡検察の手へ渡る。フィントン本人はシャトルの後部で拘束されたまま、顔を灰色にしている。保健局印影、医師署名欄元画像、爆薬設置図、五者の会計写し。彼が鞄に入れて逃げようとした証拠の数々が、彼の口を完全に割らせていた。
古い鉄道駅の信号所で、カール・ラウクは坑木に縛られたまま発見される。
州警察のライトが傾いた信号所を白く照らす。ラウクの右手の指四本は不自然な角度で腫れ、壊れた片膝は線路脇の泥に沈んでいる。砕けた無線機が足元に沈み、外套の内側からは、改ざんされた巡回表、非公式資金のメモ、D-3の簡略図が次々出てくる。
救急隊員が担架を持ち上げる。ラウクは痛みに顔を歪めるが、声を出さない。
「保安官カール・ラウク。これらの記録について説明できますか」
州警察の捜査官が、防水袋に入った紙束を彼の前へ掲げる。
ラウクは紙を見る。次に、線路の向こう、南の尾根の土煙を見る。唇が少しだけ動く。だが何も言わない。折れた指でも、壊れた膝でも、記録の束の前でも、最後まで口を閉ざす。
土煙は少しずつ雨に沈んでいく。
ドギョムは赤い廃トラックの横、泥の上に立っている。救急車のドアが閉まり、ジョアンを乗せた車が先に下っていく。別の車にはアルマとメアリーと若い男がいる。ミゲルの名を呼ぶ声が無線から何度も流れ、やがて学校屋上で保護、負傷軽微という報告が混じる。
ディナはその場で膝をつきかけ、すぐ立ち直る。グラディスは書類鞄を抱いたまま車体にもたれる。ヘナは冷蔵倉庫に到着した州警察車両の後ろで、左手首の火傷を隠さず、青い光を見ている。
ドギョムは誰のそばにも行かない。
胸元で、認識票が濡れたシャツの内側に触れる。ソ・ドギョムという名前と軍番号。キャンプ・ソラウドの夜明けから、ずっと紙の上で殺されかけた名前だ。
彼は二本の指を襟の内側へ入れ、冷たい金属をつかむ。折らない。まだ捨てない。ただ、いちばん深い場所へ押し込む。
その時、州警察の無線が一段低い声で告げる。
「D-3内部、奥で生存反応あり。マローンと思われる男を発見。意識あり」
ドギョムは土煙の向こうを見る。壊したはずの男が、まだ息をしている。
そしてブラスヒルは、初めてその息を、紙の上ではなく生きたまま裁く場所へ運ぼうとしていた。
法が遅すぎる町で、今日倒すべき悪党を倒す男
112話 張り替えられた掲示板
次の話