冷凍倉庫の扉が閉まると、白い冷気は細い霧になって床へ沈む。
厨房下の無線はまだ小さく鳴っている。低い男の声は、三人を起こせと言ったあと、しばらく雑音だけを吐き続けた。ヘナは取っ手に触れたまま、息を浅くする。ドギョムは棚の奥、古い牛肉パティの箱の影へ押し込んだB-L-17をもう一度見る。破れた角は内側へ向けてある。輸送キーも凍った紙箱の間へ沈めた。
「三人って、誰ですか」
ヘナの声は低い。
「箱に触れられる人間だ」
ドギョムは濡れ布を丸め、ビニール袋へ二重に包む。手の甲には何も見えない。だが見えないものほど、人を追い詰める。
「向こうは内部を疑う。こっちは、その疑いを育てる」
夜明け前、ドギョムは裏口から解体屋へ戻る。雨はほとんど止み、錆びた車体の上に残った水だけがぽつぽつ落ちている。ルーファスは作業場の奥で待っていた。眠っていない顔だ。ラジオはつけていない。音を出す必要がなくなったからではない。聞くべき音を逃さないためだ。
「二号車は止まった」
ルーファスが言う。
「死んでない」
「知ってる。そこまでは流れた。問題はそのあとだ」
彼は油で汚れた封筒を台の上へ置く。中には三枚の紙が入っている。住所、車種、家族構成、裏口の向き、犬の有無。字は荒いが、必要な情報だけは抜けていない。
「ブラスラインの夜間便に乗る下っ端三人だ。ケイレブ・ドーン。ロビー・クライン。サム・ベル。三人ともマローンの末端だが、自分じゃ大物のつもりでいる。箱に触る、キーに触る、荷台を閉める。だが命令は出せない」
ドギョムは紙を一枚ずつ見る。町の北側のトレーラーハウス。カジノ裏のガレージ付き平屋。古い浄水塔の裏にある小さな家。距離、道、街灯、隣家の窓を頭の中でつなぐ。
「箱二つが消えた」
ルーファスは封筒の口を指で押さえる。
「上は誰かの首を出せと言う。三人は、自分以外の首を差し出す。差し出さなきゃ、自分が消える」
「三日」
「そんなにかかるか」
「互いに密告させるなら、十分だ」
ルーファスは笑わない。ただ、喉の奥で短く息を抜く。
「嘘を置くのか」
「嘘だけなら薄い」
ドギョムは封筒を内ポケットへ入れる。
「本物を少し混ぜる」
その夜、町はいつもより静かだ。静かな町ほど、窓の奥で目が開いている。ドギョムは軍用ブーツの底を泥の浅い場所でならし、足跡の形を崩す。最初の家は北側のトレーラーハウスだった。ケイレブ・ドーン。道路から見ればただの錆びた箱だが、裏の窓だけ新しいアルミ枠に替わっている。急いで金が入った家に見える。
ドギョムは扉を壊さない。窓枠の埃も払わない。開ける前の線を覚え、開けたあと同じ線へ戻す。中は古い煙草と安い洗剤の匂いがする。テーブルにはビール缶が三本、流しには油のついた皿が二枚。人が眠っている部屋の扉は半分開いている。
ケイレブはマットレスの上で仰向けに眠っていた。片手は枕の下に入っている。銃ではない。折りたたみナイフだ。ドギョムは床板の鳴る場所を避け、マットレスの端だけを持ち上げる。そこへ小さなメモを挟む。
ロビー。サム。17。21。
数字は箱のシリアル番号の最後の二桁だ。全部は書かない。全部を書けば資料になる。二桁だけなら、知っている者だけが意味を作る。
寝室を出る前、ドギョムはテーブル横の安物のライターを一つ取る。青いプラスチック。底に爪で削ったKの文字がある。ケイレブのものだ。盗むには安すぎる。だからこそ、落ちていたら目に入る。
二つ目の家はカジノ裏の平屋だ。ロビー・クラインは車を愛する男らしく、ガレージの中だけが家よりきれいだった。工具はサイズ順に並び、壁には古いレースカーのポスターが貼られている。ドギョムは裏の小窓から入る。窓枠の埃は指一本分だけ動かし、出るときに戻す。
家の奥からいびきが聞こえる。テレビは砂嵐の画面をつけっぱなしで、音量だけ絞られている。テーブルには無線機の充電台があるが、本体はない。ロビーは眠るときでも無線を枕元に置く種類だ。
ドギョムはガレージの車の下へかがみ、左後輪のそばに青いライターを落とす。自然に転がったように、工具箱の影へ半分だけ隠す。見つける者は、見つけた自分の観察力を信じる。信じた瞬間、疑いは自分のものになる。
出る前に、棚の上の小型携帯ラジオを一つ抜き取る。黒い本体の背に白いテープが貼ってあり、Rの文字が書かれていた。ロビーは自分の物に印をつける男だ。盗まれたら気づく。だがすぐには騒がない。騒げば、なぜ夜間便の周波数を聞いていたかも問われる。
三つ目の家は古い浄水塔の裏にある。サム・ベルの家は、前の二つより貧しい。庭には子供用の三輪車が倒れ、裏口の横には割れたプランターが積まれている。ドギョムは犬がいないことを確認してから、雨どいを使って窓の上へ手を伸ばす。鍵は古い。音もなく開く。
中から女の咳がする。子供の寝返りの音もある。サムだけの家ではない。だから動きはさらに小さくなる。ドギョムは廊下の板を踏まない。壁に肩を当てず、棚の写真にも触れない。
裏庭へ出る。土は柔らかい。彼はプランターの下、雨で少しえぐれた場所を指で掘り、ロビーの携帯ラジオを埋める。深くはしない。明日、誰かが庭を見れば、黒い角が土の下から少しだけ見える。サムが見つけても、マローンの部下が見つけてもいい。意味は同じだ。
三つの家を回り終えるころ、町の東が薄く灰色になる。ドギョムは食堂へ戻らず、学校の裏手にある古い搬入口へ向かう。ミゲルはそこにいた。自転車を壁へ倒し、弁当箱を胸に抱えている。痩せた顔には眠気より緊張が濃い。
「姉さんは」
「眠ってる」
それだけでミゲルはうなずく。聞きたいことを飲み込み、代わりに弁当箱を開ける。中にはカセットテープが二本入っている。一本には保安官、もう一本には空白のラベル。字はまだ書かれていない。
ドギョムは小さな紙片を渡す。周波数が二つ、鉛筆で短く書かれている。
「新しい無線だ。三人が使う。送信するな。録るだけだ」
ミゲルは紙を見つめる。右手の古い痣は薄くなっているが、指の動きはまだ硬い。
「密告を待つんですか」
「密告は本人たちがする。お前は受けるだけでいい」
少年の喉が上下する。カセット二本は軽い。だがミゲルは、それを手のひらの中で石のように握る。これまで彼は、姉を取り戻すために見て、数えて、逃げた。今度は大人たちが殺し合う声を、自分の手で残すことになる。
ミゲルが弁当箱を閉じ、胸へ押しつけると、ドギョムはもう背を向けていた。
学校のチャイムがまだ鳴る前、少年が一人で入った放送室の窓に、朝の光が当たる。
そのとき、部屋の奥で古い受信機が勝手に短く鳴った。空白ラベルのテープを入れる前に、ざらついた男の声が一瞬だけ漏れる。
「……ロビーが、俺を売る気だ」
ミゲルの手が止まる。赤い録音ランプは、まだ点いていない。
法が遅すぎる町で、今日倒すべき悪党を倒す男
35話 冷凍倉庫の奥の薬品箱
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