午後六時という時刻は、廃ボウリング場の平面図の上に黒い染みのように残ったまま、夜へ沈んでいる。
ヘナズ・ダイナーに入った点検班は、冷凍庫の前まで来た。ヘナは壊れた温度計、古い配線、床の水漏れを順に見せ、冷凍倉庫の扉を背で塞いだ。十五分後、黒電話が一度だけ鳴って切れる。決めていた合図だった。生きている。まだ踏み込まれていない。
ドギョムはその一度だけで十分と見る。十分ではないが、十分にするしかない。
イベント当日の夜、郡コンベンションホールの裏口は雨で黒く濡れている。搬入口には白いテントが張られ、金属探知機の横で保安官代理ではない民間警備の男が名簿をめくっている。ドギョムは灰色の作業服の襟を立て、帽子のつばを低く下ろす。胸には清掃業者の薄い入館カード。ヘナが常連客から借りてきたものだ。常連は今夜、熱を出して寝ていることになっている。
「清掃補助。厨房通路」
ドギョムは短く言う。声を少し低く、少し眠そうにする。多く話す者ほど記憶に残る。
警備の男はカードを機械に通す。緑のランプが点く。名簿の下の欄には車のナンバーを書く欄があり、先に入った業者たちの数字が並んでいる。ドギョムは清掃カートの持ち手を握ったまま、空欄に借りた常連の古いバンの番号を書く。ペン先は迷わない。迷えば目がそこに止まる。
「奥。ロビー側には出るな」
「わかった」
扉が開き、コンベンションホールの裏側の空気が流れてくる。洗剤、湿ったカーペット、安い香水、温め直した料理の油。人の多い建物の臭いだ。リハビリセンターの地下にあった漂白剤と薬品の臭いより、ずっと明るい。だが、その明るさの底にあるものは同じだとドギョムは知っている。
厨房通路を抜ける途中、壁の向こうから拍手の予行練習のような音が響く。誰かがマイクの位置を確かめ、誰かが笑う。スタッフの女がワインの箱を抱えて小走りに通り過ぎる。ドギョムはカートを壁際へ寄せ、目だけで動線を測る。右が厨房。左が控室。突き当たりの非常口の前に保安官代理が一人。腰の無線機は低い位置。銃には手を置いていない。会場内だからだ。ここでは誰も、暴力が舞台袖から出てくると思っていない。
ロビーへ通じる扉の小窓から、光がこぼれている。
郡議員たちがカクテルグラスを持ち、記者が黒いカメラバッグを肩にかけ、州知事随行の職員らしい男たちが名札を胸につけて立っている。壇上裏の大型スクリーンには、町長エヴァン・プライスの笑顔が映る。紺のスーツ、小さな星条旗のピン、白い歯。その横に、「リハビリで立ち上がる町」という標語がゆっくり切り替わる。写真、標語、町の空撮、子供と握手する町長の写真。また標語。
その下を、カール・ラウクが歩いている。
今日はカーキ色の制服ではない。濃いジャケットに白いシャツ、首元のボタンを一つ開けた私服姿だ。だが、立ち方は保安官のままだった。手は自由に動く高さにあり、背中は壁を預けず、視線だけが入口から入口へ移る。客の顔を一人ずつ見る。笑顔を作らない。覚えるための顔で見ている。
ドギョムは小窓から視線を外す。ラウクはロビーを見ている。後方通路の床を磨く清掃員までは見ていない。だがそれは今だけだ。
清掃カートの底には、折り畳んだ雑巾、ゴミ袋、予備の洗剤に見せた空ボトルがある。その空ボトルの中に、小さな変換器を入れてある。黒いUSBメモリは作業服の内ポケット。銀色の一本はミゲルの弁当箱の底に残っている。誰か一人が落ちても、映像はまだ残る。
後方通路はロビーの裏を半円のように回り、壇上裏へ近づくほど音が厚くなる。ドギョムはカートを押しながら、通路の床に落ちた紙くずを拾うふりをして監視カメラの角度を見る。二台。片方は厨房通路、片方はロビー側扉。電気室の前の短い死角は、平面図で見た通りに残っている。
グラディスの声が耳の奥でよみがえる。
郡施設の標準暗証番号。今も変えていなければ。
ドギョムはカートを電気室の前で止める。通路の先ではスタッフがグラスのトレイを運び、誰もこちらを見ていない。彼は掃除中を示す黄色い小さな標識を床に置き、しゃがみ込む。靴紐を直すふりで、ドアノブの番号錠へ手を伸ばす。
グラディスから聞いた数字を押し、ノブに力を込める。重い抵抗がある。
そのまま半回転させる。錠前は古い金属音を小さく鳴らし、開く。
ドギョムは息を止めない。息を止める者は、隠れている者に見える。自然に扉を押し、カートを半分だけ中へ入れて、自分も滑り込む。扉を閉める前に通路をもう一度見る。誰もいない。
電気室の中は狭い。壁一面に配電盤が並び、古い空調の風が温かく乾いている。メインスクリーンの入力端子は右奥のラックにまとめられていた。太いケーブルに、会場側、壇上裏、予備入力と白いラベルが貼られている。その横にはバックアップ電源の遮断器が一列に並ぶ。触れるだけなら簡単だ。だが切れば警報が行く。今夜必要なのは停電ではなく、割り込みだ。
ドギョムは手袋をはめ、空ボトルから変換器を取り出す。手のひらに収まる小さな金属の箱。古い映像端子を外部入力として誤認させるために、廃ボウリング場で三度試した。成功は二度。失敗した一度は、認識まで五十二秒かかった。
今夜、五十二秒はない。
内ポケットから黒いUSBメモリを取り出し、変換器に差し込む。カチリと小さく音がする。続けて変換器の短いケーブルを予備入力端子の横へつなぐ。画面のない機器の小さなランプが赤く点き、次に黄色へ変わる。外部入力として認識されるまで、四十秒。
同じ時刻、壁の向こうで司会者の声が大きくなる。
「皆さま、本日はブラスヒル再生後援行事にお越しいただき、誠にありがとうございます。ただいまより、町長エヴァン・プライスよりご挨拶を申し上げます」
拍手が揃う。訓練されたような、同じ高さの拍手だ。プライスの穏やかな声が、壁と配線を通して電気室の中へ響く。
「ブラスヒルは、苦しみを知る町です。しかし同時に、立ち上がる力を知る町でもあります」
ドギョムはカートから箒を抜く。扉の内側の取っ手と、配電盤前の金属フックの高さを測る。箒の柄を斜めに掛け、端に雑巾を巻いて滑りを止める。正式な鍵ではない。だが外から扉を開けようとする最初の数秒を奪うには足りる。
彼は膝をつき、変換器のランプを見る。黄色。まだ変わらない。認識待ち。
シャツの奥で、認識票の金属が胸に当たる。廃ボウリング場を出る前、ヘナは何も言わなかった。ミゲルも何も言わなかった。ただヘナは清掃服の襟を一度直し、ミゲルは弁当箱を両手で抱えていた。アルマは非常梯子の二段目が鳴る場所を、もう覚えたはずだ。
ヘナズ・ダイナーの冷凍設備点検は、今夜で終わったわけではない。ラウクが次に本気でそこへ向かえば、扉も冷凍庫も屋根裏も理由にはならない。だからここで止める。客席を止める。沈黙を止める。
「私たちは家族の回復を信じています」
プライスの声がさらに柔らかくなる。
「そして、外から持ち込まれる暴力ではなく、互いを支える制度によって——」
電気室の扉の外を、靴音が一つ通る。止まらない。遠ざかる。ドギョムはランプから目を離さない。
黄色が一度だけ瞬く。
三十九。
彼は腕時計を見ない。頭の中で数える。三十八。三十七。壁の向こうでグラスが触れ合う音がする。三十六。プライスの声。三十五。揃った拍手の残響。三十四。
そのとき、扉の外で足音が戻ってくる。
一人ではない。二人分。片方は硬い革靴、片方は軽い作業靴。足音は電気室の前で止まる。
ドギョムは変換器へ手を伸ばさない。抜けば終わる。押さえれば進む。
外側のノブが、ゆっくりと一度回った。
法が遅すぎる町で、今日倒すべき悪党を倒す男
55話 揺れた町のスクリーン
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