「教会側の店は、まだ――」
途切れた無線のあと、地下室には発電機の振動だけが残る。誰も続きを言わない。ラウクが何を見ているか、もう全員が同じものを思い浮かべていた。缶詰、電池、包帯。生き延びるために買った物が、今度はここを指す矢印になる。
ドギョムは広場の空白へまだ印を入れない。代わりにミゲルを見る。
「学校へ戻れるか」
アルマの肩が動く。ミゲルは答える前に、添え木を巻いた指を弁当箱の縁から離した。
「戻れます。昼なら、ドローン部の機材室に先生はいません。イベント準備でホールに出るって」
「二日」
「はい。今日と明日」
ドギョムはうなずく。「現場で組め。持ち出すな。飛ばす準備だけだ」
その日の午後、ミゲルは弁当箱と自転車の尾灯を抱え、学校の裏門から入る。校舎はイベント前の飾りでざわついているが、廊下の声はいつもより浅い。保安官代理の車が正門前を通るたび、生徒たちは窓を見ないふりをする。
ドローン部の機材室は体育館裏の端にある。顧問教師の机には、郡コンベンションホールの搬入予定表と、紙コップの冷えたコーヒーが残っている。鍵は放送室のものより軽い。ミゲルは左手で回し、右手は胸の前に抱えたまま中へ入った。
棚には競技用の小型機が四機、撮影用が二機、練習用のフレームがいくつか並ぶ。彼が狙うのは、夜間飛行が可能な二機だけだった。去年の郡大会で使った赤い機体と、校外の農場撮影で使った黒い機体。どちらも校長には古い備品として扱われているが、レンズとバッテリーだけはまだ死んでいない。
ミゲルは床に古い毛布を広げ、その上に弁当箱を置く。底板を外すと、壊れず残ったカセットの薄いケース、予備のUSB、小さなドライバー、布テープが出てくる。自転車の尾灯は、赤い合図ではなく、今回は後方確認用の小さな光源になる。
『尾灯は使うな』
ドギョムの声を思い出し、ミゲルはスイッチを入れない。内部の小さな基板とレンズだけを取り出し、黒い機体の後部フレームに合わせる。赤く光らせるためではない。暗い山道で、後ろから近づく車の影を拾うためだった。
指がうまく曲がらない。人差し指と中指は添え木の上で重く、ネジ一本をつまむだけで額に汗が浮く。痛みが強くなるたび、彼は奥歯を噛む。声を出せば、廊下の誰かが立ち止まる。立ち止まった誰かが、あとで保安官代理に話す。
机の下で物音がした。ミゲルは一瞬、息を止める。だがそれは古い充電器のケーブルが床へ滑っただけだった。彼は拾い上げ、二機の追加バッテリーを並べる。一機目には夜間撮影モジュールを移し、二機目には軽いレンズと後方カメラを積む。速度は落ちる。だが見失わない。
放課後のチャイムが鳴る。遠くで顧問教師の声がして、誰かが体育館の鍵を探している。ミゲルは工具を弁当箱へ戻し、半分組み上がった機体を棚の奥へ押し込む。見た目は分解途中の故障機だ。盗まれたようにも、使えるようにも見えない。
一日目はそこまでで終わる。二日目の昼、彼は食堂の混雑を避け、パンをポケットに入れたまま機材室へ戻った。指のテープは汗で緩み、添え木の端が皮膚を擦っている。彼は巻き直したい衝動を抑え、先に配線を終わらせる。
赤い機体には監視航路を任せる。リハビリセンター裏庭を高く回り、分岐D-3の換気塔上空で一度だけ高度を落とす。白いバン、ブラスラインの荷台、人を並ばせる列。それを広場のスクリーンへ送るには、長く追う必要はない。見せるべき一瞬だけを拾えばいい。
黒い機体には追跡航路を任せる。峡谷の山道出口から郡道八十一号線の南側分岐点まで、マローンの夜間輸送ルートを後ろから追う。尾灯のレンズを仕込んだ後方カメラが、追われている側ではなく、さらに後ろにつく車を拾う。マローンの車列が一台で動くとは、もう誰も信じていない。
ミゲルは校内地図の裏へ航路を書き、さらに弁当箱の薄い紙に写す。学校のプリンターは使わない。ログが残る。顧問の端末も触らない。鉛筆の線だけで、距離、電池残量、風向き、失敗した時の落下地点を入れていく。
窓の外を、カーキ色の車がゆっくり通る。保安官代理ではない。黒いピックアップだ。ミゲルは手を止める。車は正門前で止まらず、雨の薄い校庭を横切るように見て、そのまま角を曲がる。
彼は数えた。五十七秒後、同じ車が反対方向からもう一度通った。今度は速度が遅い。ヘッドライトは点いていない。運転席の顔は見えないが、フロントガラスの内側で何かが光る。無線機の小さなランプか、携帯の画面か。
ミゲルは窓から離れ、機体を棚の奥へ戻した。鍵を閉める前に、机の下の埃へ落ちたネジを一つ拾う。拾わなければ、誰かが分解の新しさに気づく。彼は床を指先でならし、工具跡を消してから廊下へ出た。
夜明け前、教会地下へ戻ったミゲルは、肩で息をしていた。ヘナが梯子の下で受け止めようとするが、彼は弁当箱を先に差し出す。箱の中には紙が二枚、バッテリーの残量表、小さな尾灯の抜け殻が入っている。
ドギョムは壇の上を空ける。ミゲルはそこへ航路図を広げた。赤い線はリハビリセンター裏庭からD-3換気塔へ回る。黒い線は峡谷の山道出口から南へ伸び、郡道八十一号線の分岐を越え、さらに地図の端へ消えていた。
「ここから先、郡の地図にありません」
ミゲルは別の紙を重ねる。夜間輸送の古い録音、カジノシャトルの話、マローン側の運転手交代。線を合わせると、終点は町ではなかった。メキシコ国境方面へ伸びる砂漠の中、小さな滑走路の記号に突き当たる。
グラディスが息を呑む。「滑走路……」
ジョアンは毛布の中で目を開ける。声はまだ薄いが、意味は明確だった。
「薬だけじゃない」
アルマが弟の紙を見る。ミゲルは何も言わない。彼が持ち帰った線は、箱だけの道ではなかった。白い粉、署名欄、死亡欄が空白の人間たち。それらを一緒に町の外へ運び出す最後の口だった。
ドギョムは指先で滑走路の上に小さな丸を描く。鉛筆の芯が紙を破らない程度の、静かな丸だ。
「ここを見せる」
「追うんじゃなくて」
ミゲルが言う。
「見せる」
ドギョムは短く返す。
ミゲルはうなずき、ようやく自分の指を見る。添え木のテープは汚れ、端が剥がれている。彼は歯で新しいテープを切ろうとして、アルマに手を取られる。アルマは黙って巻き直す。強くしすぎず、緩くしすぎず。ミゲルは痛みに顔をしかめるが、声は出さない。
その時、無線受信機が低く鳴った。全員の目が、同じ小さな箱へ向く。ノイズに混じったマローン側の短い通信を拾い、受信機に耳を寄せていたアルマが低い声で報告する。
「学校正門の前を、黒いピックアップが通ったって。ヘッドライトなしで、ゆっくり二度」
ミゲルの顔から血の気が引く。それは彼が昼間、校舎の窓から見た光景とまったく同じだった。ドギョムは滑走路の丸から指を離し、今度は学校の位置に鉛筆を置いた。
アルマが、無線の向こうの声を聞き取って付け加える。
「一回目は見てた。二回目は、探してた、と」
法が遅すぎる町で、今日倒すべき悪党を倒す男
87話 ラウク、教会を読む
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