学校の位置に置かれた鉛筆の先は、しばらく動かない。
その同じ頃、保安官事務所の会議室では、別の鉛筆が郡地図の上を乾いた音で走っている。
壁一面の地図には、北の古い鉄道駅、教会、コンベンションホール広場、カジノシャトル停留所、郡道八十一号線の分岐が赤と黒で刺されている。テーブルの上には、解体屋から回収した先月分のディーゼル領収書が広がっていた。油染みのある控え、端の破れたレシート、現金払いの小さな紙。どれも一枚では意味を持たない。ラウクはそれを日付順に並べ、ルーファスの営業売上表を横に置く。
若い代理が壁際に立ったまま言う。
「売上と燃料が合いません」
「合わないんじゃない」
ラウクは三つの日付に印をつける。
「合わせた相手が違う」
売上は雨の日に落ち、晴れの日に少し戻る。古い町なら普通の曲線だ。だがディーゼルだけは、三日に一度、規則正しく跳ねる。廃車を動かす量ではない。ルーファスの作業場が生きていた時でも、こんな間隔では増えない。
ラウクは次の紙を引き寄せる。外郭の食料品店三軒の売上控えだ。封鎖下で、どの店も缶詰と水は少し増えている。町中が不安になれば当然そうなる。だが一軒だけ、数字が別の顔をしていた。
教会近くの店。
缶詰は普段の三倍。圧迫包帯は四箱から十二箱。単三電池とランタン用電池は、売れた数より仕入れ直しの数が多い。現金払いが増え、カード決済は減っている。しかも跳ねた日付は、解体屋のディーゼルが跳ねた日と重なる。
若い代理が息を飲む。
「鉄道駅じゃない……?」
ラウクは答えない。手の甲の、紙をめくるたこを机に二度打ちつける。こつ、こつ、と乾いた音が会議室に落ちる。
「廃倉庫でも、廃モーテルでもない」
彼は地図の教会へ黒いピンを刺す。
「教会側だ」
別の代理が、北の鉄道駅に刺さった赤いピンを見る。灰色の外套、軍用ブーツ跡、血の包帯、寝袋、缶詰と書かれた小さな紙がついている。餌としてはよくできている。よくできすぎている。
ラウクはその紙を外さない。むしろ赤いピンを少し深く押し込む。
「信号所の突入準備は正式に進めろ。車両二台。武装三人。北側道路の検問変更も流す。無線でははっきり言え」
「相手に聞かせるんですか」
「聞かせるために言う」
若い代理の喉が動く。ラウクは領収書を日付ごとに扇のように並べ、もう一度、教会と広場を結ぶ路地を鉛筆でなぞる。教会の地下。近くの食料品店。会場広場の外郭通路。カジノシャトル停留所脇の細い路地。全部が、雨の町の同じ高さでつながる。
「鉄道駅へ行くのは、あの男に見せる顔だ。だが守っているのは顔じゃない。中身だ」
彼は部下二人を名指しし、鉄道駅の写真、信号所の見取り、廃トラックの位置を持ってくるよう命じる。それから声を落とし、残った三人だけを会議室の端へ寄せる。
「教会近くの店裏を一班。広場東側の搬入口路地を一班。カジノシャトル停留所脇を一班。制服は半分でいい。残りは道路管理と設備点検に見せろ。教会そのものへは、まだ入るな」
「まだ、ですか」
「先に出入りを数える。人間は、逃げる前に物を動かす」
ラウクは教会側の食料品店の売上表を指で叩く。缶詰、包帯、電池のほかに、コーヒー、使い捨てカップ、安い毛布が混じっている。救護所の匂いだ。逃走者の寝床ではない。誰かを運び込んでも死なせないための場所。
「ヘナが焼けたあと、次に火を使える台所はどこだ」
誰も答えない。答えは紙にもう出ている。
ラウクは無線機を取る。開いた周波数は保安官事務所のものではない。短くノイズが鳴り、別の男の呼吸が向こうに乗る。ヴィンス・マローンの線だ。
「北の鉄道駅は動かす。よそ者はそこを見る」
向こうで誰かが笑ったような息を漏らす。
ラウクは続ける。
「二人の子供をもう一度捕まえられないなら、その横の大人たちから持ってこい」
会議室の空気が一段冷える。若い代理は地図から視線を外すが、ラウクは見ない。命令は紙に書ける形でなければならない。だが今の一文だけは紙に残さない。残さなくても、動く者たちは理解する。
「ジョアン・リバースは優先だ」
マローンの声が低く返る。
「女記者は俺のものだ」
「広場で画面が動けば、女記者の名前も出る。名前が出る前に口を塞げ」
「子供は」
「子供は走る。あんたの言葉だ」
短い沈黙のあと、マローンが笑わずに言う。
「今度は大人を走らせない」
通信が切れる。ラウクは無線機を置き、領収書を一束ずつ封筒へ戻す。回収した紙は証拠ではない。まだ、命令の材料だ。
「この部屋の話は、北の鉄道駅までだ」
彼は部下たちへ言う。
「教会の名を外へ出した奴は、報告書を書く前に俺の前へ来い」
同じ時刻、教会側の食料品店では、店主が閉店準備のふりをしてレジ下の棚を整理している。年配の男で、いつもは客の顔を見ない。だが今日は、雨で濡れた窓の向こう、路地を通る黒いピックアップの影を二度見ている。
カウンター下には、古い電話機と別に、小さな短縮番号の端末が貼りつけてある。町の店にはよくある。非常連絡、配送業者、保安官事務所、ガス会社。押す先が本当にどこかは、ボタンを作った者しか知らない。
店主は戸口の札をCLOSEDへ返す。棚の端に残った缶詰の空き段ボールを足で奥へ押す。圧迫包帯の在庫札を裏返す。電池の棚には、まだ補充の跡が新しい。
指が、カウンター下へ沈む。
短縮番号の二番が押される。電子音は鳴らない。代わりに、店の奥の壁で古い冷蔵庫が一度だけ低く唸る。店主は受話器も取らず、何も言わない。ただ、二秒待ってから指を離す。
教会地下では、ディナが封筒ノートの写しを膝に置き、ヘナの焼け跡から拾った鉛筆で買い物の記録を整理している。誰がいつ、どの店で何を買ったか。彼女はそれを、ラウクに読まれる前に自分たちも読むために写している。
受信機が一瞬だけ鳴る。言葉ではない。短い信号のような音だ。グラディスが顔を上げ、ヘナが階段の方を見る。ドギョムは地図から目を離さない。
ディナの手元の古いプリペイド携帯が、画面を点けずに一度だけ震える。彼女は息を止め、封筒ノートの余白へ新しい一行を書く。
教会側食料品店、閉店直後、カウンター下、短縮二番。
最後の点を打つ前に、ペン先が初めて震えた。
その震えは、彼女が怯えたからではない。線の向こう側から、こちらを読んでいる手が、もう店の下まで届いたと知ったからだった。
法が遅すぎる町で、今日倒すべき悪党を倒す男
88話 食いつくふりの三重包囲
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