五分削られた夜は、いつもより早く町の灯を落とした。
ドギョムは閉鎖されたボウリング場の裏口から出る前に、時計を一度だけ見る。二十一時二十五分。ヘナの食堂へ封筒を取りに来る保安官代理は、町長側の打ち合わせで都合よく十分遅れる。ラウクはその巡回を五分早めた。残る隙間は、五分と少し。中で迷えば終わる。
カジノシャトル停留所には、雨に濡れた客が三人立っている。カジノのネオンが水たまりに揺れ、送迎バスのアイドリング音が路地の奥まで低く流れ込む。ドギョムは濡れた帽子のつばを下げ、停留所の柱の影で一度止まる。誰も彼を見ていない。正しくは、見た者が見なかったことにする町の目で、彼をすぐに通り過ぎている。
シャトルの扉が開く。空気ブレーキの音が大きく吐き出された瞬間、ドギョムは歩道から外れる。掲示板と古い電話ボックスの間を抜け、停留所脇の細い路地へ体を滑らせる。背後で運転手が客に何かを怒鳴る。その声が、錆びたフェンスを越える靴音を隠した。
旧車両登録事務所の南壁は、思ったより低い。板で塞がれた窓の下、錆色の配管の横に、ルーファスが言っていた換気口がある。金網の四隅は古いネジで留まっていたが、一つだけ新しい。誰かが最近外し、同じように戻した痕だ。
ドギョムは手袋の指先でネジの頭をなぞる。工具を使えば音が出る。彼は細い金属片を差し込み、濡れた壁に肩を押しつけたまま、一本ずつゆっくり回す。北壁の向こうから巡回車の低いエンジン音が遠くに聞こえた。まだ近くない。だが遠いだけで、遅れているわけではない。
最後のネジを手の中へ落とし、金網を内側へずらす。換気口は大人が通る幅ではない。ドギョムは息を半分だけ吐き、左肩を先に差し込む。肋骨の古い痛みが鋭く跳ねる。歯の奥で音を噛み殺し、片腕、頭、胸、腰の順に押し込む。シャツが金属の縁で裂け、心臓の上に入れたジョアンのストラップ片とミゲルの母の番号メモが、皮膚に硬く当たる。
『忘れるな』
声にはしない。彼は暗いダクトを肘で進み、内側の格子を指で探る。古い爪のように曲がった止め具を一つ外すと、埃と乾いた紙の匂いが喉へ落ちた。資料室だった。
床に降りると、膝の下で薄いリノリウムが小さく鳴る。ドギョムはその音が壁の外へ抜ける距離を測り、一拍待つ。何も動かない。懐中電灯を口にくわえ、光を細く絞る。
部屋は二つの時代で埋まっている。手前のキャビネットには、郡の車両登録書類が詰まっている。色あせたナンバー、廃車届け、所有者変更、差し押さえ記録。名前を残すための紙の山だ。その奥、壁際に鉄製の箱が三つ置かれている。白いラベルには、黒いタイプ文字で同じ言葉が貼られていた。
廃鉱安全資料。
ドギョムは一つ目の箱へ膝をつく。南京錠はない。だが蓋は湿気で固く、開くときに嫌な金属音を立てる。中は点検報告書と崩落写真、郡の安全勧告だけだった。北坑口、排水溝、通行禁止看板。観光案内図に載っていた顔だけが、ここにも整えられている。
二つ目の箱へ移る。背後の壁の向こうで、雨水が樋を落ちる音がする。懐中電灯を歯で噛み直し、蓋を持ち上げる。上には古いヘルメットの受領簿、坑木補修の請求書、鉱山労働者名簿の一部がある。ルーファスの弟の名前を探す時間はない。ドギョムは束を崩さず、両手を下へ潜らせる。
底の紙だけが違う感触だった。厚く、乾いて、折り目が硬い。
彼は一束を引き抜く。黄ばんだ作業図面が、黒い布紐で縛られている。紐は古く、引けば切れそうだった。ドギョムはナイフを使わず、結び目だけを外す。紙を広げた瞬間、部屋の狭さが消えた。
一九五〇年代の坑道図面。線は細かく、坑道分岐、換気枝道、排水坑、支柱番号、閉鎖採掘場の座標が一枚に詰まっている。北坑口と西坑口は端に追いやられ、中央には、今の地図にはない古い分岐が網のように走っていた。
ドギョムはジョアンのノートから写した略図を頭の中で重ねる。換気塔。新しいコンクリート。郡有財産の看板。清掃車の停止位置。灰色の作業服が消えた鉄扉。指先が紙の上を滑り、ひとつの閉鎖採掘場入口で止まる。
そこだった。
換気塔の横で見た新しいコンクリートの位置が、図面上の閉鎖採掘場入口と正確に重なる。観光案内図にはない。衛星写真では潰されていた。郡の安全資料では、最初から存在しないように扱われていた。だが一九五〇年代の紙は、そこに入口があったと冷たく示している。
ドギョムは息をゆっくり吐く。これは鉱山の入口ではない。町の腹の裏側だ。
さらに図面の隅に、別のインクを見つける。元の製図とは違う。青黒く、線がわずかに震えている。郡が回収したあと、誰かが手で加えた小さな座標だった。数字は小さく、閉鎖採掘場から直接つながる坑口を指していない。分岐を三つ折れ、換気枝道を越え、奥まった末端で止まっている。
どの坑口にも直接つながらない場所。
ジョアンが書いた一行が、紙の上で急に形を持つ。
二つ目の写しは、鉱山の埋もれた場所にある。
ドギョムは座標を見つめる。埋もれた、という言葉は隠喩ではない。坑道の奥、閉じた分岐の末端。人を地図から消す町が、写しまで地図から消した場所だった。
三つ目の箱を開ける時間はない。必要なものはここにある。彼は図面を折り目どおりにたたむ。紙の端が指に食い込み、古い粉が手袋へ付く。シャツの内側を開き、ジョアンのストラップ片とミゲルの母の番号メモの上から、図面を差し込む。三つの紙と布が心臓の上で重なった。
そのとき、外壁の向こうで足音がした。
早い。
ドギョムは懐中電灯を消す。口の中に金属と埃の味が残る。足音は北壁をなぞる巡回のものではない。南壁のフェンス沿いを、迷わずこちらへ来る速度だった。二人。片方は軽く、もう片方は靴底が硬い。ライトを消した車が、路地の入口でエンジンを切る低い震えも続く。
ラウクは今まで、必ず一拍遅れていた。廃モーテルでも、排水路でも、ボウリング場でも。遅れているふりをして、次の場所を見ていた。
だが今夜は違う。
ドギョムが内側から換気口の格子へ手をかけた瞬間、外で懐中電灯の光が壁を白く舐めた。足音はもう、換気口の真下で止まっている。
ラウクが一拍遅れて来なかったのは、その日が初めてだった。
法が遅すぎる町で、今日倒すべき悪党を倒す男
51話 埋もれた座標の始点
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