入口の白い縁を、ドギョムは手袋の甲でなぞる。新しいコンクリートは一度きれいに流され、そのあと内側から割られていた。削った跡は粗い。外へ見せる閉鎖ではなく、中で動かすための蓋だった。
彼は安全帽のライトを一瞬だけ壁へ向け、標識の残骸と床のレールを読む。すぐに消す。光は便利だが、ここでは声より早く居場所を売る。闇に目を慣らし、奪った無線機を腰に押し込む。
奥から発電機の低い唸りが響いている。一台ではない。二つの振動が少しずれて、坑木とコンクリートを別々に震わせていた。ディーゼルの臭いに薬品の甘い粉っぽさが重なる。リハビリセンター本館の漂白剤とは違う。隠す臭いではない。ここはもう、隠す必要のない場所だ。
ドギョムは入口の影を抜ける。足を枕木の端、油を弾く黒い水たまりの横へ置く。鉱車レールは奥へまっすぐ伸び、途中で二股に分かれている。片方は発電機のある明るい空間へ、もう片方は低い山道出口の方へ下っていた。新しい油がレールの内側だけ光っている。荷を載せた鉱車が何度も通った線だ。
作業場は坑道の腹を無理に広げたような空間だった。天井には補強の鋼材が打ち込まれ、古い銅山の坑木の上に新しい電線が這っている。発電機が二台、鉄柵の横で回り、裸電球が十個ほど黄色い輪を落としていた。壁際には換気用の銀色ダクトがあり、熱を逃がしきれず、空気は湿ったまま重い。
レールの上には鉱車が三両並んでいる。積まれているのは鉱石ではない。茶色い薬品箱、白いプラスチック容器、透明袋に入った粉末、裸の錠剤を入れた金属トレー。箱の側面には合法品ならあるはずの出荷番号も、処方薬の管理ラベルもない。黒いマーカーで短い数字が書かれているだけだ。
本館地下二階のラインは、まだ病院と更生施設の皮をかぶっていた。ここにはそれすらない。名前も、番号も、署名もいらない。運び、包み、出す。そのためだけの場所だった。
鉱車の一両は半分ほど積み終わっている。白い粉の袋が布テープで閉じられ、錠剤のトレーと一緒に木箱へ詰められていた。レールの下り側を見れば、山道出口へ抜ける細い開口がある。風の流れが外へ向いている。峡谷の雨の臭いが、薬品の奥からかすかに混じった。
ドギョムは人数を数える。発電機の横に一人。ラベル台の周囲に二人。鉱車の脇で箱を押している男が一人。今、偽の無線で旧排気側へ動かした三一と三二はここにはいない。だが戻る。時間は細い。
視線を奥へ移す。
鉄網があった。作業場の端、キャビネット列の手前に二つの区画が組まれている。簡易の檻だ。天井のパイプから鎖を垂らし、床には膝の跡が黒く残っている。中で六人が膝をついたまま、無言で包装作業をしていた。
全員、手首に保安ブレスレットがない。
その事実が、ドギョムの胸の奥で冷たく沈む。リハビリセンターの輪は、管理するためのものだった。ここでは管理さえ不要ということだ。逃げ道は坑道と山道と銃で塞ぎ、紙の上では最初から存在しない。ブレスレットを外せば、追跡記録も残らない。
檻の左端で、痩せた少年が箱のラベルを移している。安全帽の明かりが作業員の肩をかすめ、その反射が一拍だけ少年の顔を照らした。
ミゲルだった。
口元には乾いた血が固まり、下唇が割れている。右手は布で粗く巻かれていたが、人差し指と中指の二関節が不自然に腫れていた。ラベルをつまむたび、肩がわずかに跳ねる。それでも少年は手を止めない。止めれば次に何をされるか、体が覚えている動きだった。
ドギョムの指が無線機の縁を押す。今すぐ鉄網へ行けば、発電機横の男が見る。鉱車脇の男は警報ボタンまで三歩。ラベル台の二人は互いの死角を補っている。殺す必要はない。だが音を出せば、戻ってくる足音が増える。
檻の隣、もう一つの鉄網の端で、女が背を向けて箱のラベルを移していた。短く切られた髪。痩せた肩。靴のない足のかかとに、古い火傷の色が見える。
アルマだ。
彼女はまだドギョムに気づいていない。気づかない方がいい。視線が一度でも動けば、見張りは理由を探す。ドギョムは怒りを喉の奥へ押し込み、まず出口を見る。次に鍵を見る。次に遮断器を見る。
発電機の後ろ、錆びた配電盤に大きな赤いレバーが二つある。主電源と非常灯。主電源を落とせば作業場は暗くなるが、発電機横の男が即座に触る。非常灯だけを切れば、奥の影が濃くなる。鉄網の錠前は外部業者製の番号錠ではなく、坑道用の古い南京錠に新しい鎖を巻いただけだ。南ダンパーの見張りから奪ったカードでは開かない。鍵は班長か発電機横の男が持つ。
部下たちの動線を頭へ刻む。発電機横の男は二十秒ごとにメーターを見る。ラベル台の左の男は右足を引きずっている。鉱車脇の男は箱を持つとき必ず無線機を棚へ置く。右奥の警報ボタンは赤いカバーつきで、片手で跳ね上げるには一拍かかる。
一拍あれば足りる。
無線機が小さく鳴った。
「三一、旧排気。煙なし。戻る」
戻りが早い。疑ったのではない。異常がなかっただけだ。ドギョムは送信ボタンへ指を置くが、迷うことはない。余計な声は線を増やす。黙る。三三が旧排気の煙を見ているなら、すぐ返さなくてもおかしくはない。
発電機横の男が顔を上げる。無線機のノイズに反応したのではなく、作業場の奥の別のものを見た。
ドギョムはその視線を追う。
天井の隅に、黒い半球があった。古い防犯カメラではない。新しい。粉塵よけの透明カバーに、裸電球の黄色が細く反射している。配線は発電機側のダクトへ伸び、監視室か、少なくとも作業場の外へつながっている。
さっきまでカメラは鉄網の方を向いていた。
今、ゆっくりと軸が動く。
ドギョムは安全帽を胸の前に下げ、つばで顔の半分を隠す。だが角度が悪い。カメラは発電機、鉱車、ラベル台を順に舐め、最後に入口の影へ向かってくる。
発電機横の男が眉をひそめた。
「おい。三三、そこにいるのか」
声は無線ではない。作業場の空気を直接揺らした。
ミゲルの腫れた指が、ラベルの上で止まる。アルマの肩もわずかに固まる。二人とも振り向かない。振り向けない。
カメラの黒い目が、最後の数度を残してドギョムへ向く。
その瞬間、無線機からマローンの声が落ちた。
「入口を映せ。今すぐだ」
法が遅すぎる町で、今日倒すべき悪党を倒す男
73話 消え残る赤い補助灯
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